事業再建をはばむ風評被害
東京電力福島第一原発事故による風評被害が、被災事業者の再建をはばむ大きな要因のひとつになっています。
農水畜産業者は、国が定めた厳しい検査基準を満たしているにも関わらず「宮城県産は残留放射能不検出(ND)でも扱わない」として取引停止に遭うなど、苦境が続いています。
宮城県の調査では、水産加工業者の約7割、一般栽培農業者の約6割が「風評被害があった」と回答しています。被災した水産加工業の6割は震災前よりも売上げが減少しており、風評被害が事業再建を一層困難なものにしていることが分かります。
沿岸・沖合の水産物への影響も大きく、なかには震災前の半額以下で取引されている魚もあります。
宮城県漁協志津川支所の阿部富士夫さんは「震災前は1キロ450円だった銀ザケが震災後は250円、371円と採算ラインを割る単価で推移しています。今年からエサ代が一気に上がるので最低1キロ500円を超えないと銀ザケ養殖業自体が無くなる可能性もあります」と危機感を抱いています。
また、水揚げした魚介類は毎朝、魚市場で放射性物質検査を行い、「いずれも残留放射能不検出なので安心して食べられるのですが、風評の影響で他の産地に市場を奪われたものもあります」と阿部さんは実情を話して下さいました。
被災地の事業者は「3年経つのだから」と支援からの自立を求められ、また自ら懸命な努力もしているのですが、風評はその努力をも無にしてしまうものとなっています。
※数値は宮城県「宮城県の風評被害の現状と調査結果について―概要版」(平成24年9月14日)、東北経済産業局「グループ補助金交付先アンケート調査」(平成25年9月)より。