あれだけの災害、子どもの心に影響がないわけがない
沿岸部の子どもたちは、4年前と比べると大分落ち着きを取り戻しています。しかしそれは表面上のことで、心の問題が無くなったわけではありません。むしろ時間が経つにつれて今まで潜在化していたことが顕在化し複雑化していくため、長期的に見守っていく必要があると言われています。
宮城県子ども総合センター心のケア推進班は、震災で傷ついた子どもの心のケアに適切に対応できるよう、沿岸部の教員や保育士等支援者への支援を行っています。
次長(班長)の佐藤尚美さんは、「津波の避難訓練一つとっても学校では子どもや保護者への配慮の仕方などで葛藤が生じますが、児童精神科医や心理士が助言を行うことで先生方も安心して子どもに向き合える」と教育現場への支援の必要性について話します。
また教員は、不登校や集中力の欠如など表に出てくる問題が震災の影響によるものか、発達や生育環境などに起因するものか、判別が難しい状況にも直面します。
「子どもたちの問題行動については、多くの先生が“震災の影響かどうかは分からないが”と慎重に発言する」と佐藤さん。予断を持たずに子どもを見ようと努力する先生方の姿が浮かびます。沿岸部の教員や保育士は、そうした複雑な環境のもとで子どものサインに気付く見守りの眼を養っていかなければなりません。
いまも仮設住宅で不自由な暮らしをしている、経済的に余裕がない、家並みが消えた街を見ながらスクールバスで通学する、そんな子どもたちが被災地にはまだ大勢います。安定した生活を薬に心の回復を遂げた子どもがいる一方で、力尽きそうになっている子どももいます。ダメージが蓄積している恐れがあります。
「あれだけの災害だったのだから、影響がないわけがない」という考えを前提に、佐藤さんたち心のケア推進班は教員等支援者と考えを共有し、学校などへの訪問相談を通じて子どもの心のケアの取り組みを進めています。