第35回2016年7月5日
~ひとの復興~
被災した人たちとともに地域をつくり上げていくボランティア
被災地でのボランティアはいま過渡期にあります。
宮城県内の「災害ボランティアセンター」(各社会福祉協議会)は昨年すべて閉所し、それぞれ復興支援ボランティアセンターに役目を移行しました。NPO等も復興の進展に伴って地元への事業移譲を図ったり、活動の絞り込みや高度化に取り組んだりするなど、地域の実情に合わせながら次の段階へ進もうとしています。
NPO法人ガーネットみやぎは、「小さな復興」をキーワードに、農業者や食品加工業者など小規模事業者へのサポートを続けています。当初は、支援物資のマッチングがサポートの主流でしたが、徐々に販売支援へと軸足を移してきました。理事長の小笠原直美さんは、「皆さん5年間あきらめず新しいことにチャレンジしてきた方ばかり。“地域のために事業を続けよう”という覚悟を持っている。今年はそうした事業者の販売支援に力を注ぎたい」と話します。
小笠原さんが地元の同級生とともにボランティアを始めたのは発災直後の3月末です。被災地には他県から多くのボランティア団体が訪れていましたが、小笠原さんはその活動に感謝しつつも、「支援はいつか終わる。そのとき被災した人たちはどうするのだろう」と感じていました。そこで「被災者自身による復興」をモットーに掲げ、被災した人たちとともに地域をつくり上げていく活動を目指したのです。
イベントでの商品販売サポートや助成金の紹介、商品開発など、小規模事業者に寄り添う活動を続ける中で、次の課題も見えてきました。震災前から地域が抱えていた人口減少や高齢化の問題が加速したことです。「NPO法人として地域の様々な課題に対応できる組織体制をつくらなければならない」。そう小笠原さんは決意しています。
ボランティアの支えが必要な場面はまだまだあります。一方で被災した人びとの生活環境は確実に変化しています。地元に根付いたボランティアには、地域の課題を視野に入れた上での伴走が求められているのかもしれません。