11月22日(金)、オンライン企画(Zoomのライブ配信)にて、「第54回長野県消費者大会」が、「平和で豊かな未来のために私たちができること」~SDGsのゴールとの関わり=私たちの課題~をテーマに開催し、75名を超えるアクセスが県内外からあり、ご参加(視聴)頂きました。
冒頭、司会の県消団連の土屋信一事務局長(長野県生協連)の開会あいさつでは、現在、研究でドイツにいらっしゃる斎藤幸平氏の紹介がありました。その後、県消団連の鵜飼照喜会長より主催者挨拶がありました。
東京大学大学院総合文化研究科准教授の斎藤幸平様には「持続可能な開発目標は可能か SDGsの批判的検討」と題してお話をいただきました。
冒頭、現在の世界的な状況を「ポリクライシス」と表現される状況と説明され、多くの課題を解決するためのSDGs=「持続可能な開発」に内包された矛盾に焦点を当てて、今の時代に私たち自身が何に目を向けて何に取り組むべきかと投げかけられました。
「SDGsは大衆のアヘンである」という指摘。SDGsは企業PRの手段にされ、消費者の小さな選択で満足感を抱かせ、現在の生活を転換しない「免罪符」になっている。グリーンウォッシュに騙されている。SDGsは環境問題であるかのように矮小化され、特に日本では「人権問題」課題はほとんど無視されている。
また「持続可能な発展をしていく」ことと「経済発展をしていく」ことは、実は本質的に矛盾しているという事実があり大きな問題である。目標⑧は本当に必要か?GDP成長を世界規模で求めることが正しいとは言い難い。一定の経済レベルを超えたなら、ウェルビーイングの実現のためには、必ずしも経済成長が必要とは限らない、むしろ過剰な長時間労働のストレスや不安が、幸福度や満足度を下げていることを直視するべき。SDGsの目標達成や十分に豊かになっている先進国がさらに経済成長を目指すことによってではなく、現在の富を適切に(再)分配することで経済的平等を実現することによって達成することができるはず。
発展途上国における経済発展が、その国の国民を豊かに幸せにすることになるのか?経済成長がその国の国民の健康につながっているのか?
経済成長による持続可能な世界を追求することは、ごまかしとも言える。地球の持続可能性と人間的発展に力点を置くなら、「維持可能な発展」と表現すべきで、人間的発展を目指す維持可能な発展のためには、必ずしも経済成長は必要ないという認識=脱成長こそがSDGsには必要であると、話されました。
協同組合への期待については、本日の視点を共有し、地域の支えになる役割などをしっかりと持ち続けて欲しい、そういう活動や考えを発信して欲しいと感じています。日本の協同組合も持続可能な社会を作る時にその考え方をアップデートしていただきたいと思っています。
最後に、長野県消団連の鵜飼会長と斎藤幸平氏との対談を行いました。農村の活動や女性労働への評価、伝統野菜の話、地域の活動に役割など様々な話題について有意義な意見交換があり、楽しい対談となりました。
参加者の感想としては、「成長のみが幸福ではない、何を削り何を残すか難しい選択と思う」、「疑問に思っていた事をバッサリとお話し頂いたのでスッキリしました」、「SDGsについて、こんなにも浸透しているのに目標が達成できない理由がわかったように思いました」
最後に、長野県消団連の新井あゆみ副会長(コープながの)より御礼とまとめの挨拶を行い閉会としました。